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 玄関を出たところで、階段を上がってきた軽い足音が叔父に声をかける。 「あ、おじさんこんにちは。明いますか?」 「ああ、浩君……だっけ? いるよ」  夏の太陽をたっぷり浴びた少年の肌は浅黒く、額に浮く汗さえも眩しい伸びやかさだ。  白い歯を弾けさせる笑顔。真っすぐ前を見据える強い視線。おそらくはこれが普通の15歳の少年だ。  玄関ドアの内側にいる、弱々しい明の表情を思い浮かべ、冷や汗のような罪悪感に胸が苦しくなる。  少年らしい屈託のなさを奪ったのは自分だと責める気持ちも、愛していると言い訳をしながら、翳った日常を押し付けた過去も、偽善の中にあるのだと気づかされる。  今、償わなければ、確実に全てを失うだろう。 「アキの具合があまり良くないのだけど、良かったら留守番をしていてくれないかな? すぐに戻るので」 「まだ調子悪いんですか? せっかく退院したのに」 「夏はどうも苦手みたいでね」 「いいですよ、明と留守番してます。わわ……! 明!」  玄関を入ったところで、明は膝を抱えていた。肩を小さくすぼめ、脅えたように震えている。涙を溜めた目は赤かった。  どうしたのだと駆け寄る浩を漫然と見つめた叔父は、その場には不似合いなほどの力強さで、階段をゆっくりと下りていった。  何かを決意したかのように。
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