溺愛ラビリンス

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「どうもな、その眼鏡は気にいらねぇ。どうせ伊達だろ?」 「だって……、顔、隠したい」 「ほ~ら、またそうやってうつむく。アキは綺麗なんだから堂々としてろって、おれが守ってやるんだから」 「綺麗って……言われたくない」 「とにかく眼鏡はなし。これは智にい命令」  ――アキ、アキ……。綺麗な私のアキ……。  ベッドで囁く叔父の声が耳元でした気がして、「じゃあな」と手を振る智章を見ながら明の体は冷えていく。  智章に知られたくない秘密が、青空の下で燻っている。どんなに顔を隠しても、どんなにうつむいて歩いても、どこかから漏れ出てしまいそうな恐怖が明に纏わり付く。もう、昔のように無邪気に笑えない自分を、智章は守ってくれるだろうか。いつまでこうしてじゃれあっていられるだろうか。  ――智にい……  穢れた肌が泡立っていたたまれず、明は智章から目をそらした。
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