溺愛ラビリンス

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 そんな女子たちの思惑を無視し、近寄りがたい壁を作る浩と、いつもうつむきがちに孤立する明は、何となく一緒に居ることが多い。  安藤 明。  井坂 浩(いさかひろし)。  出席番号が隣同士だったのも近づくきっかけだった。無愛想な浩と、目立ちたくない明。はみ出し者同士だった二人が、互いに心を寄せるようになったのは、去年の夏の、思い出したくないあの日からだ。  去年の夏休み。暑くなると途端に食の落ちる明は夏が苦手だ。  気分の良い時は図書館へ行ったり、智章に連れられて外出することもあったが、出先での冷房に体力をそぎ落とされて疲れてしまう。  智章が受験生のその年は頻繁に会うこともできず、一人で家に閉じこもることが多いところへ、朝練を終えた浩が時折訪ねてくるようになった。
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