溺愛ラビリンス

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 化学と数学が苦手な浩は、明に教えてもらいながら宿題をし、明が用意する昼食を食べた後、昼寝をしてまた夕方の走り込みにグラウンドへ戻って行く。家へ帰ると妹の友達が来てて、ぎゃあぎゃあうるさいのだと渋い顔をし、親も兄弟もいない明の静かな家は、まるで隠れ家のようだと羨ましがった。 「明、お前良い嫁さんになれるぞ」 「そう? 浩君もらってくれる?」 「お、おう」  塩をきつめにしたおにぎりをほおばりながら、なぜか赤くなっている浩を明は面白そうに見た。一人でいる時は食べることさえ億劫なお昼を、こうして一緒に食べる人が居るのは心地いい。  智章以外の初めての友達だ。浩は明に自然に接する。じろじろ見ないし、ヘンに気を使わない。なんでもないようにそこに居て、ちょっと無遠慮であるがままだ。居間の薄いラグの上でごろんと横になり無防備な寝顔を晒す。陽に焼けた子供のようなその顔に、明は思わずクスリと笑った。
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