溺愛ラビリンス

26/34
前へ
/475ページ
次へ
 最悪な目覚め。「愛している」と何度も呟いた叔父。愛しているならどうして? 責める言葉は、叔父の身体の下ではしたなく乱れる自分自身に吸い込まれて消えた。 「……やだよ……、おじさん。どうして……」 「ああ……アキ……、愛しているんだ」 「どうして……、こん……な、ああ……やだ……痛いぃ」 「アキ、わたしのアキ……」 「どうして……、どうして……」 「愛してる。愛してる。愛してる」  「愛」ゆえの行為だと納得するには、突然すぎるし、異常すぎる。「どうして」の答えを求める意味は、この暴走の果てに流れて見えなくなった。それでも叔父とセックスをしたと言う事実が、救いがたい残像をいつまでも脳裏に焼きつけ、明と叔父の関係を決定付けるしかなかった。  一度果てた後、勢いなのか諦めなのか、叔父はいつまでも身体を絡ませてくる。わけのわからない熱気の中で、互いに何かから解放されたくて、何か意味のあることを考えたくなくて、夢中で抱き合っていた。  明も叔父も、声を上げて泣いた。  何かが壊れてしまった悲しみよりも、後戻りの出来ない迷路に迷い込んだ戸惑いと、見えない未来が怖かった。自分達はきっと、出口のないトンネルの中に迷い込んでしまったのだ。足枷のような罪を背負って闇を彷徨い続けるのだと。
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2435人が本棚に入れています
本棚に追加