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 明はぼんやりと天井の木目を辿りながら、道隆の言葉を繰り返し思い起こした。  デートと言ったのは、道隆にとっては気楽な言葉でしかないだろう。それでも逸る気持ちを懸命に抑えようとする明は、日曜日を思うと落ち着かない。  期待なんかしちゃいけない。それでも嬉しい。車の中でどんな話をしよう。先生のことを沢山知りたい。仕事以外のこと。どんな趣味を持っているのかな。好きな食べ物は何かな。スポーツは何をやっているんだろう。いつも何を考えて、何を見て、どんなことをしているのか、聞いてもいいだろうか。あんまりうるさいと嫌われるかな。でも、せっかくのお休みなのにどうしてぼくなんかと?  気まぐれ……、そんな言葉も思い浮かぶ。  明は考えれば考えるほど、得たいの知れない迷路に迷い込むようで怖くなりながらも、沸き立つ気持ちを隠せない。  先生に近づける。それだけでいい。胸に抱えた枕をぎゅうと抱きしめて、布団の上をごろごろ転がった。嬉しくて、体中がジタバタする。
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