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 トマト風味のリゾットが大皿に不似合いなほどほんの少しと、柔らかそうなパンが薄くスライスされて添えられている。 「無理はするな。食べられるものを、食べたいだけ食べたらいい」  道隆も無理強いはしない。  摂食障害は気持ちの負担が問題になる。早く元気になろうと頑張る気持ちさえ負担になるほどに、精神が弱ってしまう病気なのだと道隆が言う。  薄味の柔らかい口当たりは、明をホッとさせたが、やはり全部を食べることができなくて、申し訳なさそうに俯くと、頑張って食べたご褒美だと言って、真樹は小さなトリュフを一つ、明の口に突っ込んだ。 「あ……」  滲んで広がる甘さが明を蕩かせていく。  はにかむような笑顔に、「いい笑顔だ」と道隆は目を細め、真樹は小さなため息をついて顔を背けた。 「さて……と、ジジイは撤収するか」 「おい、コーヒー」 「自分で入れやがれ」 「ち……」
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