2420人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
「アキー、アキおいで」
風呂から上がった後、一仕事あるからと部屋にこもっていた叔父が明を呼ぶ。日常から非日常へ変わる瞬間が、明はいつまでたっても慣れないままだ。
「お仕事、終わった?」
「終わったよ。待った?」
「……ん」
机の上を片付ける叔父に近づくと、優しい腕が伸びてきてふわりと髪をかき撫でる。明はうつむいて唇を噛んだ。叔父の撫で回す手、甘い痺れを引き出す唇、そして、身体を狂わせる刺激がざわめく期待になる。そんな自分が恥かしい。
「アキ、今日何か良いことがあった?」
「え……、別に何も。どうして?」
「ん~、何だか可愛い」
「やだな、可愛いなんて……」
「ふふ」
顔を隠すための少し長めな前髪を、叔父は何度もかき上げて、撫で付けながら明の顔を露わにする。その目には確かに明に対する優しさがある。慈しみがある。同時に迷いのような哀しみも見え隠れした。
最初のコメントを投稿しよう!