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 道隆は混沌とした靄の中から、明と言う光を見つけたと言う。そしてお前はどうなのかと問うて来る。  何をしていた。この2年間。お前は何も見つけることができなかったのかと。 「辛い時は確かに幸せだったことを思い出す。だがそれは、失った過去ではなくて希望だと思えばいい。戻っては来ないが可能性が見つかる。あなたのことは忘れない」  放心したように何かを考えるあやの肩を、道隆はぽん……と軽く叩き、師長に後を任せて診察室を出て行った。大きな手は、熱く柔らかかった。 「あなたは……、そんな優しい人じゃなかったわ」  すれ違った背中であやはつぶやき、白い壁を見つめながら一筋の涙を零した。  片方から流れる涙は真実の涙ではないと言う。  そうよ、これは本当の涙じゃない。私は女優だから、上手に泣いて見せただけ。  誰にも見られないように。
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