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「どう思う?」 「今日も……、ありましたね」 「ああ」  診察を終え、明の帰った診察室のデスクの前で、無造作に足を組んでふんぞり返った道隆は不機嫌に唸った。睨むような視線の先にあるカルテには、背中の絵があり、右脇あたりの丸印に”Congestion ”と、殴り書きがしてある。  意図的な巧妙さを感じる背中の鬱血の痕。いわゆるキスマーク。数は多くはない。一つか二つ、本人では確認できないような場所に、まるで第三者に向けての警告のように刻まれている。  2週間前に診察した時は、首の付け根の辺りだった。その前は肩甲骨の下、その前は……。道隆のカルテをめくる手が乱暴になっていく。 「悪い年上の女性に遊ばれているんじゃ……」  道隆は、キスマークをつけたのは男だと睨んだ。しかも合意の上での関係を持つ相手だ。シミも痣もない綺麗な体は乱暴をされた跡はない。おそらくは後ろから挑みかかった何者かが、行為の最中につけたのだ。
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