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「そういうの、漫画とかだけの話かと思ってたけど……でもいいと思う。応援する」  特にからかうでも、はしゃぐわけでもなく、中山さんはいつもと同じ調子でそう言った。そして真っ直ぐに俺を見ていた。 「じゃあ、人が足りないとこ入れていいかな?三年生は受験だからあんまり出られないらしくて。それにもともと部員も少ないから、河野くんにたくさんお願いしちゃうことになるけど」  俺はもう何も言うことができなくて、頷くだけだった。  そしてあっという間に夏休みがやってきて、水やり当番が始まった。今まであまり、というかほとんど交流のなかった部員たちとも顔見知りになった。本当に顔見知り程度だから、そんなに話す事もなくて、ただひたすら水やりと草むしりに通う日々が続く。  それでも中山さんとは少しだけ距離が詰まった気がした。交わす言葉は少ないけれど、多分俺と中山さんは『友達』だ。 「河野くん、明日一人だけど大丈夫?」  明日は俺以外に誰も都合がつかず、当番は俺一人になった。 「うん。水やればいいだけだし」  期待した夏休みは、結局、西島先生と会えていない。それでももしかしたら、姿だけでも見かける事が出来るかも、と微かな望みにかけて俺は学校へ通う。 「そう。じゃあ、明日頑張ってね」  俺と中山さんは後片付けをして、その場でさっさと解散した。
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