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「あれ、ここはステージですか。」
丸いプールを囲むように、長いベンチが階段状に並んでいる。
「イルカショーだね。まだ少し時間があるけど今のうちに座っておこうか。」
「はい、それじゃあ私は飲み物買ってきますね。何が良いですか。」
「炭酸系なら何でもいいよ。」
「わかりました。ちょっと待っててくださいね。」
そう言うと、未佳はすぐそばにある売店に向かった。
英治がベンチに腰をおろすと、三頭のイルカがジャンプした。
遊んでいるのか練習なのか、どちらにせよ、まるで歓迎してくれているようだった。
「はい、お待たせです。」
未佳は自分の顔が隠れそうな、大きなカップを両手で差し出した。
「ありがとう、これってコーラかな。」
「さあどうでしょうね。」
未佳はいたずらっぽく笑う。
英治が恐る恐る口をつけると・・・間違いない、コーラだ。
「なにびびってるんですか。」
「びびってなんかないよ。それより一つしか買わなかったの。」
「はい、特大サイズですから二人で飲めばいいかなって。」
英治はたじろいでしまった。
でも平然を装った。
「まあ、回し飲みなんて友達同士じゃ普通だよね。」
「え、まあそうですね。とくに気にしたことありませんけど、普通じゃないですか。」
英治は心の中で思った。
ー俺の高校時代には女の子と回し飲みなんて文化はなかったぞ。今の子達が羨ましい。
少しだけ沈黙が流れていった。
そして英治は思い切って聞いてみた。
「俺と一緒に水族館に行こうって言われてどう思ったの。」
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