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少し声が震えていたかもしれない。
遠くで跳ねるイルカを見ながら、目を合わさないように言ってみた。
「私なんかでいいのかなって思いました。」
英治の不安とは違い、未佳はきっぱり言い切った。
「英治さんって絶対彼女さんいるだろうなって思ってましたから。」
こんな時、なんて返したら良いのだろう。
『どうしてそう思うの』『いやいや全然もてないから』
どれも正解とは思えない。
とりあえずコーラを口に運んで落ち着くことにした。
グ・グゲェ・・・
どうやらコーラが違うところに入ってしまったようだ。
むせかえり、少し涙目になる英治。
ものすごく動揺したようで、恥ずかしさから目を開けたくない。
「大丈夫ですか。」
「うん、大丈夫だから・・・。」
未佳は口に手を当てた。
しかし堪え切れず声をあげて笑ってしまった。
「英治さんってウチのおじいちゃんみたい。」
「おじいちゃんは酷いなあ。」
ようやく治まった英治は口をとがらせて抗議した。
「だって、大丈夫じゃなさそうなのに強がって、それが余計にかっこ悪くて。」
そこまで言うと、未佳はハッと口をつぐんだ。
少しだけ歯を見せて、やや苦笑いの未佳であったが、その様子に少しだけ救われた気持ちの英治であった。
「確かにかっこ悪いよね。」
ぼそっとつぶやく英治に、未佳は慌ててフォローを入れる。
「そんなことないです。・・・むしろかっこ良いですよ。」
そう言う未佳の頬には、微かに赤みがさしていた。
しかし英治の目に映っていたのは、遠くでジャンプするイルカの姿だけだった。
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