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先ほどの電話の相手である未佳は、登録している警備員の一人で、定時制高校に通う十八歳だ。
中学の時にイジメに遭い、高校進学をあきらめていた。
しかし高校は出るよう両親から説得されて、定時制へ通うことになった。
未佳が警備員の面接に来た時、英治が面接室に案内した。それが二人の初対面であった。
面接は主任が行った為、その時は一言二言交わしただけだった。何を話したかも覚えていないほどの会話である。
面接が終わると主任が笑顔というかニヤケ顔で英治に話しかけてきた。
「おい英治、喜べ、女子高生が入ってくるぞ。」
英治は机の上の書類を整理しながら耳を傾けた。
「あのこ高校生なんですね。若いなあとは思ったけれど。」
ただ、ジャージ姿の未佳に華は感じられなかった。
「きっと家計を助ける為なんだろう。健気で良い子じゃないか。」
どうして面接した当人が、想像で話しているのか。
たいした面接ではないことが覗える。
「健気って、あのこピアスしてましたよ。」
「それくらい珍しいことじゃないだろう。」
「でも三つしてましたよ。カラコン入れてましたし、髪も染めてましたし。」
主任は口をポカンと開けた。
ちなみに主任は英治より十歳上の既婚者である。
「お前、どんな観察眼してんだよ。見すぎだよ。ストーカーか。」
英治は少しムッとした。
「一目見れば分かるじゃないですか。大体ジャージだって高いんですよ。お金に困っているとは思えませんね。」
主任も同様にムッとした。
「なんだよ、お前彼女いないから丁度いいと思ったのによ。新人教育も任せようと思ったが俺がやる。泣いて悔しがっても知らんからな。」
「忙しいので助かります。」
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