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「おい英治、明日は仕事少ないし休んでいいぞ。」
かれこれ三週間ぶりの休みだ。
休むのが当然なはずなのに、「ありがとうございます。」と口走ってしまう英治であった。
明日はどうするか。水族館なんか行ってみたいと思ったりするが、成人男性が一人で行けば好奇の目で見られること必至だ。
かといって、家で一日過ごすには勿体ない気がしてならない。
ルルルルル・・・
事務所の電話が鳴っている。
主任はたった今トイレに立ったばかりで、事務所には英治しかいない。
すでに就業時間を過ぎている。英治は渋々受話器を取った。
「お疲れ様です。明日の配置はどこですか。」
電話の主は未佳だった。
明日の未佳の配置なら、机の上に置かれた配置表を確認するまでもない。
明日は未佳も休みになっている。
だがその時、英治は思わず口走っていた。
「明日の配置は水族館だ。俺と一緒に遊ぼう。」
数秒の沈黙が過ぎた。
しまった、と思ったもののもう遅い。冗談で済ませる仲でもあるまいに。
「はい、わかりました。待ち合わせ場所はどこですか。」
誘った英治が戸惑うほどに、明快な声が届いてきた。
「あ、ちょっと待ってくれ、後で折り返すから。」
そっと受話器を置いた英治は、大きく深呼吸をしてみた。
これはデートというやつなのか。
期待、後悔、感情渦巻く英治であった。
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