水族館ですか。

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水族館ですか。

 今日は土曜日ということもあり、チケット売り場は少しだけ混雑していた。  警備員らしき中年男性が列を作るように促していたが、きれいに列はできていなかった。 「ちゃんとカラーコーンを置いて、誰もが分かるように誘導しないとダメだね。」  英治は一人つぶやいていた。 「職業病ですね。」  未佳にはしっかりと聞こえていたようで、英治は気恥ずかしくなってしまった。 「大人2枚でお願いします。」 「あ、私は高校生ですよ。」 「そうだった。すみません、大人1枚と高校生1枚で。」  英治は5千円札を差し出した。  おつりは千五百円だった。 「あの、お昼をおごるって話ですけど、なしでもいいですよ。」  未佳は申し訳なさそうにしている。  ここまでくるのに高速代金で千円、駐車場代で千円、入場料で3千5百円使っている。  お昼までとなると1万円近くのお金を使わせることになってしまう。  しかし英治は聞いていなかった。  なにより『高校生1枚』という言葉に衝撃を受けていた。  相手は一応十八歳だが未成年には変わりない。  ましてや現役女子高生ともなると、自分が悪いことをしているように思えてきた。 「さっきのチケット売り場のお姉さん、美人でしたね。」  英治は顔が浮かばなかった。 「そうだったの。まったく見てないや。」 「英治さんって女の人に興味ないんですか。」  さらっと難しい質問だ。  『ある』も『ない』も引かれてしまうのではないか。 英治の心は決まらないまま、適当に答えることにした。
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