1人が本棚に入れています
本棚に追加
水族館ですか。
今日は土曜日ということもあり、チケット売り場は少しだけ混雑していた。
警備員らしき中年男性が列を作るように促していたが、きれいに列はできていなかった。
「ちゃんとカラーコーンを置いて、誰もが分かるように誘導しないとダメだね。」
英治は一人つぶやいていた。
「職業病ですね。」
未佳にはしっかりと聞こえていたようで、英治は気恥ずかしくなってしまった。
「大人2枚でお願いします。」
「あ、私は高校生ですよ。」
「そうだった。すみません、大人1枚と高校生1枚で。」
英治は5千円札を差し出した。
おつりは千五百円だった。
「あの、お昼をおごるって話ですけど、なしでもいいですよ。」
未佳は申し訳なさそうにしている。
ここまでくるのに高速代金で千円、駐車場代で千円、入場料で3千5百円使っている。
お昼までとなると1万円近くのお金を使わせることになってしまう。
しかし英治は聞いていなかった。
なにより『高校生1枚』という言葉に衝撃を受けていた。
相手は一応十八歳だが未成年には変わりない。
ましてや現役女子高生ともなると、自分が悪いことをしているように思えてきた。
「さっきのチケット売り場のお姉さん、美人でしたね。」
英治は顔が浮かばなかった。
「そうだったの。まったく見てないや。」
「英治さんって女の人に興味ないんですか。」
さらっと難しい質問だ。
『ある』も『ない』も引かれてしまうのではないか。
英治の心は決まらないまま、適当に答えることにした。
最初のコメントを投稿しよう!