1話 臭い世界

12/16
前へ
/258ページ
次へ
草原だ。 見渡す限り草ボーボーの、だだっ広い草原にいつの間にか移動している。 私は頭を掻いた。 草原の中、1匹のイノシシが歩いている。 頭の上に1本の立派な角を生やしたイノシシが歩いている。 私の目の前の空間に、半透明かつ緑色の薄っぺらい紙のようなものが現れた。 私の前で浮かんでいるその緑色の紙には、白色で文字が書かれている。 私はその文字を読んでみた。 ミッション名:角イノシシを倒せ ステージ:はじまりの草原 難易度:1 クリア時の報酬:5000ゼン 失敗時の罰金:1ゼン その宙に浮かぶ紙には、そう記されていた。 状況から察するに、あの目の前で歩いている角の生えたイノシシを倒せというのがこの草原でのミッションなのだろう。 クリアすれば、単位こそ聞きなれないが5000ゼンという金が手に入る。 逆に失敗すれば1ゼンという金が失われる。 クリア時の報酬に対して失敗時の罰金はえらく少ないな。 一瞬そう思ったが、すぐに考えを改めた。 私は自殺した時の格好のまま、この世界に現れた。 ガスマスクもある。 セーラー服も吐瀉物付きのままある。 もちろん財布もある。 その中に日本銀行券も、1000円札1枚だけ入っている。 1円ならもちろん持っている。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加