1話 臭い世界

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いつの間にか草原の中心に銀色の扉が現れている。 私はその扉に向かって地面を這うように進んだ。 扉とは本来部屋とともにあるべきだ。 部屋に入るために扉は存在するのだから。 しかし、その扉は草原の中に単体で存在していた。 私はその扉を開けた。 普通に考えると、扉を開けてもその先には草原が広がっているはずだ。 しかし、なぜかその先には、私が先ほどまでいた双六のような世界が広がっていた。 双六マップとでも言うのだろうか。 白円が黒い線で結ばれているその世界に私は進んだ。 双六マップに到着した私の右手から、元々あったはずのハンドガンが消えていた。 その代わり、ハンドガンに姿を変えていたはずのサイコロが2つ握られている。 さらに驚くことに、先ほどイノシシに襲われて負ったはずの傷が完治している。 足の骨折すらも治って、普通に二足で立てている。 私は2つのサイコロを地面に転がしてみた。 そのサイコロはコロコロと転がって、2と3の目を出した。 私のいるマスから、5マス先のマスが光り始めた。 「進もうか」 私は今いるマスから、足を進める。 私は生き返りたいのだろうか? いつの間にか治っていた足で歩きながら、考えてみた。 どんな願いと共に生き返りたいのだろうか? 分からない。 少しだけいらいらする。 私は進んではいるが、どんな願いを自らが求めているのかわからないのだ。 5マス先に進んだ私は、前回のマスと同様、そのマスの中に消えていった。
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