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「あのマスク外しちゃおうか」
霧山 霞。
それが私の名前だ。
私に向かって発し続けられる暴言の最後の1つに、私は反応した。
それは困る。
このマスクを外されるのは困る。
私の息が荒くなり、ガスマスクからシューシューという音が漏れ始めた。
車両を変えてしまおう。
そう思った矢先、1人の女子高生が私の手首をつかんだ。
私の高校のクラスメイト、水木 恵だ。
水木の後ろにその取り巻きである、中川 香、塩谷 京子の2人も立っている。
「放してよ」
私はほとんど叫ぶかのごとく、そう伝えた。
しかし、水木は首を横に振る。
「嫌。
あんたのそのキモイマスク取ってあげる」
電車の中、数多の人間が私達を見ている。
しかし、誰も水木達を止めようとしない。
私の素顔を見てみたいのかもしれない。
興味深そうな顔で静観しているのだ。
中川が私のマスクを取り去った。
「なんだ、割ときれいな顔してるじゃん」
どこかからそんな声が聞こえた。
しかし、そんなこと私にはどうでもよかった。
マスクを取ったら、においがやってくる。
あの臭いにおいがやってくる。
私は鼻を手で覆った。
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