1話 臭い世界

5/16
前へ
/258ページ
次へ
まったく知らない町を歩いた。 コンクリートだらけのこの町。 道行く人間がみんな私のほうを見る。 見るな。 そう願うが、それは不可能だろう。 金髪、制服、ガスマスク、さらに吐瀉物。 その異様な存在を見るなというほうが不可能だろう。 正義とは何だろう? 私はよく考える。 私はそれになりたかった。 しかし、私とそれには恐ろしいほどの差がある。 その事実を、私は悲しいほどに痛感している。 私は正義を諦めたのだ。 "正義感が強い子だね" 私は大人達から、そう言われ続けて育った。 しかし今、その頃の正義感は全くと言っていいほど無くなってしまった。 私にはかつて友達がいた。 同じ小学校かつ家も近所だったことから仲良くなった澤村 希美ちゃん。 しかし、希美ちゃんは中学校でイジメにあった。 同級生達からイジメられていた希美ちゃんを、私はなんとか守ろうとした。 しかし、それは徒労に終わったのかもしれない。 希美ちゃんは中学校2年の夏、自殺したのだ。 私はひどく絶望した。 しかも、希美ちゃんをイジメていた奴らには重い罰すら与えられなかった。 それどころか、奴らは全く懲りる様子も無く、新たなイジメのターゲットを作り出したのだ。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加