5 キミとボクの変動

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「……本当に、本当なんだな?」 「しっ、信じてよォ……?シオンちゃん……?」 昼休み。弁当に口をつけながら、目の前のクラスメイトを睨みつける。 井俺に隠し事なんかしたことないクセして、いつの間にか成人男性の知り合いなんか作ってた。 それだけならまだしも……なんとその相手は、ツキハルさんの会社の同僚だったらしい。 井崎は嘘が下手だ。カラオケ店でのあの反応を見たところ、多分コイツもそれは知らなかったんだろう。 ただ……あの男、真鳥(まとり)って奴は、絶対に"ただの知り合い"なんかじゃない。 高校に入ってからの付き合いだが、井崎のことは大体は分かる。今だって俺から目を逸らして、汗かいて必死に嘘ついてる。 どういう経緯だかは知らないが、俺にすら話せないときたら……相当ヤバい何かがあるんだろうと見た。 「大丈夫なのか?」 「へっ!?な、なにがアァッ!?」 「お前だよ。あのマトリって奴に、良くないこと吹き込まれたりしてないか?」 基本的に聞かなくても何でも話してくる井崎が、俺に隠し事をするくらいなら別に無理強いする必要はないと思う。 だけどそれは井崎が危険な案件に巻き込まれていなければ、の話だ。 「シ、シオンちゃん……おっ、俺のこと、心配してくれてんの……?」 「まあ、それなりには」 だけど井崎は俺の言葉を聞くと目をギラギラと輝かせて、突然抱き着いてきやがった。 「ちょっ……」 コイツ、俺がベタベタされんの嫌いって知ってるクセして……! 「シオンちゃん……俺、嬉しくてどうにかなりそう……」
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