鏡よ鏡よ鏡さん

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「明日はおでかけしましょうか。」 ママが、私に布団をかけてくれながらそう言ってくれた。 本当?嬉しい!この最近、病院とこの部屋しか見ることしかできない景色ばかりで、飽きてたところよ。 私は、嬉しくて眠れなかった。 まあ、家に帰って眠れたことなどほとんどなかったのだけど。  次の朝、手付かずの私のご飯を片付けて、ママが私を車椅子に乗せてくれて、公園までお出かけした。朝の澄み切った冷たい空気が清清しい。空は青く、道には小さなどんぐりが落ちていて、葉っぱはみな紅葉している。いつの間に、季節はこんなにも秋めいたのだろう。  公園への道の向こうから、小さな女の子を連れた、お母さんがこちらに向かって歩いてきた。まるで、幼い頃の花音とママみたいねと言い、ママは私に微笑みかけてきた。 通りすがりに、その女の子が不意にこちらを振り向いて私を見た。 「ねえ、ママー、あのおばちゃん、お人形さんに話しかけてるよー?変なのー!」 すると、そのお母さんの顔が引きつり、女の子の口に慌てて手を当てて、逃げるように走り去ってしまった。 どういうこと?ママ。 「きっと花音がかわいいから、お人形さんと間違えてしまったのね。」ママはそう言って微笑んだ。 なんだ、そうなのか。 やっぱり私ってかわいいんだね、ママ。 散歩が終わって、私は車椅子から降ろされると、ママにだっこされて、ベッドに横たわった。 ねえ、ママ。いつからそんな力持ちになったのかな。 花音がいくら華奢だからって、45kgはあったはずなんだけどな。 そして、ベッドの横には悪趣味な金屏風の鏡台と、黒縁の鏡は横向きに置かれており、そこには可憐な私の顔が映っている。それにしても、ママ。この鏡の私の顔、いつも同じなのは気のせいなのかな。体が動けないから顔まで動かせないのかな。ねえ、ママ、この鏡の私の顔、瞬きしないの。そういえば、最近、いつ瞬きしたかしら。 ねえ、ママ。ママ。 今日もいつものように、鏡台の前には、バラの匂いのお線香が焚いてある。
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