f.2044年

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◆ 次に目覚めた時は見慣れた病院の天井だった。ぶっちゃけ見慣れたくはなかったが。 「あ……稔! 浅間先輩、稔が起き、」 「遥……?」  動くな、と制されて身体中に激しい痛みが走る。とくに鳩尾と右腕があったはずの部分がひどく痛んだ。右目があった部分は麻酔が効いているのか痛むことはなく、ただ見えないだけだ。雇い主に捨てられるのがオチ、とその言葉が頭をよぎる。 「あ……浅間氏、俺、捨てられる?」  なぜか片言になったことに自分でも意味不明だなと思いながら深刻そうな彼の表情を見た。赤い瞳は澄んでおり、いまはもう隈の面影すらないただの美青年だ。本当に昔から変わらないなこの人達。 「馬鹿が」  帰ってきたのはたった三文字だった。そのたった三文字を悲痛そうに繰り返す。拳を固く握り締め、怒りをこらえているのか震えた声を出す。 「俺、浅間氏の役に立てないなら、もう……」 「稔ちゃん! 大丈夫!?」  病室に飛び込んできたのはゆかりさんだ。浅間氏に大きな声を咎められ、俺を見て絶句する。なかなかに俺の状態は酷いらしい。 「遥。ゆかりと外出てろ。……秋山、お前用の義手を作る。目の方は……損傷が激しく視力改善が不可能だ」  彼は二人が出て行ったのを確認してからそう呟いた。どうして捨てないのかと聞きたかったが、それを聞くと今度は殴られそうなのでやめた。視界は奥行きが感じられず、まるで一枚の写真を見ているかのように遠近感が存在しない。師匠って今までこんなハンデであんな動きしてたのか、と末恐ろしくなった。 ★ おそらく初期の任務で秋山が右目と右腕失う話が書きたかった。満足です。ハッピーエンド編のみ。
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