1人が本棚に入れています
本棚に追加
【友達1】
「俺、遥さんと友達になりたいんです。上辺だけとか、そういうのじゃなくて本当に」
「どうして何回も言うの、いい加減しつこいよお前」
彼の鋭い赤の瞳が俺を見据える。俺はその視線に臆さず彼の前に仁王立ちした。
「だって言わないと伝わらないじゃないですか! 俺遥さんと友達になりたいんです!」
そうだ、彼が読むのは俺の心だ。心が読まれているのなら俺の気持ちも伝わっているはず。それを言葉にしたいのは俺が彼に伝えたいからだ。
「だから友達だって言ってるでしょ、はいはい友達友達よかったねー、それ、同情でしょ? 面倒だからやめてよ」
俯いた彼の顔と、嘲るような声。彼の過去を高岸さんから聞いたことすらバレている。だが、この気持ちは同情とかではない。
「これだと僕が可哀想な人みたいじゃん」
嘲る対象が俺から自分へと変わった。嗚呼、そうだ。この人はやはり。全部『フリ』なのだ。そうやって自分を隠して、自分に蓋をして生きて、人を遠ざけて。
「でも、明るいフリして自分を隠すのは辛くないですか」
「どうせ君だって同じだ、すぐ面倒になって、逃げ」
言わせない。言わせるわけにはいかなかった。彼が完全に壁を作り上げる前に俺は言葉を紡ぐ。
「逃げるような人間なら悪徳部から逃げてますって」
これは事実だ。悪徳部に関わっている時点で俺は彼らから逃げるつもりも、彼らを遠ざける選択肢もないのだから。
「……」
「ちなみに俺は小早川さんが好きなのでそういう趣味はないですからね!!」
黙りこんだ彼に在らぬ妄想をさせないように釘をさす。荻野 遥は顔を上げると、その整った美麗な顔を小さく歪めて「趣味わっる」と呆れたように口にする。それに合わせるように「ひっど」と言葉を吐く。本当に失礼な人だ。それも『フリ』なのだろうか。それともこれが本当の彼なのだろうか。
「今まで正面からぶつかってくるような人はいなかったんだよ、なんだよ君、馬鹿じゃないの。何さ友達になりたいって、わけわかんないよ」
「あー、いいですよねそういうの。憧れでした」
俺の少しずれた返しに彼は小さく笑い俺の目を見据える。
◆
ツイッターに載せたやつの微調整版。
最初のコメントを投稿しよう!