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【友達3】
「馬鹿ですみませんね」
俺がそう言うと彼は辛そうな表情を隠そうともせず右手の拳を握りしめる。金色の髪が窓から入ってきた風に静かに揺れた。
「悪徳部以外の人たちなら簡単に騙されてくれるのに、なんで」
言うならここだと思った。俺は大きく息を吸い込んでから彼の目を見据えて「遥さんいつも笑ってるから、……それこそ結構きついこと言われても笑ってるじゃないですか、あれが気になって」と正直に話す。稲嶺さんもそうだが、彼もそうだ。いや、彼だけじゃない、浅間氏も同じだ。何か重いものを隠している。
「僕だって気づいてたよ、君やゆかりちゃんが本気で僕を心配してくれてることくらい。でも……でも人間ってそう言うのじゃないでしょ!? 心配してても腹の底では笑ってるのが人間じゃない! なんでそうやって――」
「大丈夫ですよ、俺どんな遥さんでも友達になります。信じてくれなくてもいいです、俺は信じてますし。……まあ浅間氏や稲嶺さんにも同じように思ってますけど」
彼は呆然と立ち尽くしていたが、やがて納得したように笑みを見せ、「年下のくせに」と静かに笑う。俺の返しはもちろん決まっている。
「でも同級生でしょう、俺たち」
しばらく他愛もない話をした後、遥さんは躊躇いがちに口を開いた。
「あのさ、稔くん」
「僕を信じてくれるならさ、ゆかりちゃんと帰るとき常にゆかりちゃんの前を歩いててよ」
意味がわからないがとりあえず「へ? あ、はい……どうしたんですかいきなり」と肯定してから尋ねる。それまで稲嶺さんの話が彼から出ることは少なかったので余計に驚いていると、彼は静かに口を開いた。
「ゆかりちゃんがさ、バイクに轢かれていつか死んじゃうから、君が代わりに死んでよ」
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