1.悪徳部

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【友達5】 「……本当ですか、それ」  俺の呆然とした声に遥さんの嘲るような声が響く。まるで信じてみろとでも言っているかのようだ。 「本当だよ。今までも当たってきたから。予知、みたいな感じかな」 「ほら気持ち悪いで――」 「それ浅間氏に話しました!? 高岸さんには!?」  彼の声を遮ってそう叫ぶ。半信半疑ではあったものの、彼がそんな冗談を言う人間でないことくらいは知っている。ましてや稲嶺さんのことだ、それなら尚更―― 「話してないけど……どうして信じるの?」 「あーもー!! 俺は信じるって言ったでしょ話聞けよ!!」  俺が怒鳴ると彼は驚いたようにびくっと体を揺らした。 「バイクはどの角度から突っ込んでくるとかわかります? できるだけ詳しく、稲嶺さんは俺の方向いてるんですよね?」  俺は彼の指示に従い黒板に図を描いていく。彼の言っていることには一貫性があり、目を見ても嘘をついているようには見えない。 「うん、そう。それで……浅間先輩がそこにきて、彼の家族を壊したときみたいに能力を発動させて」 「……だいたいわかりました。俺が稲嶺さんの前を歩いてれば確かに、彼女の死は回避できるかもしれませんね」 「それだと君が死ぬでしょ」  さっきとは正反対の言葉。なんだかそれが嬉しくて、ついつい「さっき死んでよって言ってたじゃないですか、それに俺死ぬ気ないですし、悪運は強いんですよ」と笑った。しかし彼の表情はまだ悲痛で、彼の抱えていたものがこれだと理解する。 「僕は……死んでほしくない、誰にも」 「わかってる」  それは痛いほどわかっている。だからこそ彼は一人で抱え込んでいたんだろう。俺がこうやってしつこくしなければ彼は抱えたままだったのだろうか。たった一人で、ずっと。 「稔くんてさ、なんかこうたまに別人だよね」  それはよく言われる。おそらくどこかにスイッチがあるのだろうと中学生時代の恩師に言われたことがある。やる気スイッチみたいなものだろうか。
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