猫の初恋

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ー総合病院ー 無言のまま病院の前についた貴明とのえはそのまま病院の中に入り受付窓口に行った。 「すみません、清水花屋の者ですが、中村絵理子様にお届け物です」 「はい」 「サインをお願いします」 「私の名前でいいですか?」 「はい」 貴明が返事をすると受付の女性は紙に名前を書いた。 「ありがとうございました」 ラベンダーを受付の女性に渡すと貴明は紙を受け取りのえと共に病院を出ていった。 その後、貴明とのえは無言のまま花屋に向かって歩いた。 「……」 「…あの…」 のえが立ち止まると貴明も前方を向いたまま立ち止まった。 「……」 「俺のこと避けてますか?」 「別に避けてなんか」 「ならどうして俺の顔を見て喋らないんですか」 「……」 「貴明さん」 のえが手を掴んだその瞬間、貴明のドキドキが高鳴った。 「……」 「貴明さん」 「……」 のえに手を掴まれたまま貴明は頬を赤らめながら振り返った。 「顔が赤いようですが具合でも悪いんですか?」 のえは、貴明から手を離し貴明の頬に触れようとしたその時、やめろと言って貴明はのえから少し離れた。 「どうしたんですか?」 「廃墟ビルであんたに出会ってから俺、おかしいんだ…」 「……」 「俺ものえさんが好きなんだ」 「……」 照れながら口にした貴明の言葉にのえは驚き言葉を失った。 「のえさんに好きだと告白されたとき嬉しかった」 貴明はのえに近づいた。 「貴明さん、抱き締めてもいいですか?」 「……」 貴明はのえに抱きつきのえは貴明を抱き締めた。 「キスをしても…」 「いちいち聞くな」 のえの顔を見つめると貴明はのえの唇に唇を重ねた。 その光景を周平は男性の同僚と目撃した。 「……」 「ほら行くぞ」 「あぁ…」 気になりながら周平は同僚と共に歩いていった。 「なぁ、周平」 「何だ」 「男同士のキスってどう思う?」 「お互い好き同士なら男同士だろうが女同士だろうがいいんじゃないか」 「病院に行く前に食事しないか」 「いいよ」 歩きながら周平と同僚は喫茶店に向かった。
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