序章

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せっかくの日曜日。 多くの人が、仕事も、学校も、何もかも休みで、 1日を自宅で過ごす人も少なくない。 だが、僕にとって、1日を家で過ごすというのは、 拷問に近い苦痛だった。 今、自分は何をしているのか? どうしてここにいるのか? 何もかもが分からなくなって、心が砂のように美しく崩れていく。 だから僕は、予定が無い時は、 まるで、しなければいけないことを探すかのように、 無意味に、がむしゃらに、自転車を走らせた。 ・・・・佳奈。 いつも心でその名前を、呼んでいる。 決まって、いつも、返事は無い。 分かりきったことだが、どうしても呼びたくなってしまう。 ・・・いや、呼んでしまう。 あの事故で佳奈が居なくなって以来、 僕の心は、感情という、軸になるものを失った。 軸が取れた物は、形を維持できる事なく、 針で突かれた水風船のように、崩れ落ちたのだ。
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