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落間は刻を一月以上戻し自分が問題を起こした大橋までやって来た。ここが始まりである。ここで俺が問題を起こさなければ、あの店に訪れる事もなかったのだ。そうなればあんな風に滅茶苦茶な人生にもならなかったはずだ。
落間は時間を確認した。そろそろ俺が通るはず、暗闇の中、橋の始まりを見ていると泥酔した如何にもホームレスっぽい男性が歩いていくのが見えた。ホームレスで一丁前に酒飲みとはな
そしてそいつに紛れて落間が落間の前一〇メートル先を横切るのが見えた。
橋の中程で落間は見知らぬ女性に襲われるのだ。人に恨みを買うようなことはしていなかったはずだが、それが原因で取り返しのつかないことをしてしまう。
つまりその女を食い止めれば歴史を変えられる。落間は落間の後をつけ、その女が現れるのを待った、しかし待てども待てども一向にそんな女は現れない。
痺れを切らした落間は予定を変更する。女ではなく俺自身を止める。
落間はペンダントを起動させ別人に成り済まし、そして自分自身に掴み掛かった。気絶させればなんてフィクションならともかく、現実は簡単にはいかない。当然襲われた方の落間も抵抗するわけで、それが思いの外力が強い。
暫(シバラ)くの揉み合いの末に事切れたのは襲いかかった方の落間だった、過去の自分に押され落間は橋から墜落する。
全てがスローモーションに見えた。体が浮いたような感じで自分が落ちていく自分を見下ろしている。
覚えている。この光景、俺は見下ろしていた。落ちていく見知らぬ女性を
そうか今の俺は… 落間は自らの顔に手を触れるとそれが女性の顔だと気付いた。
何と滑稽な話か。
歴史を改変しようと頑張った結果、歴史の辻褄を合わせてしまうなど。
落間は暗い水の中へと落ちていく、静かで心地よくてまるで母体にでもいるかのような、そこに一つの雑音が入る。折角気持ちよく逝けると思ったのに、不快な水音が近付いてくる。
落間は宙に浮くが如く、その身体が浮いていく。気が付いた時には、川辺に辿り着いており、落間はまだその生を失っていなかった。
「あんた大丈夫か」
どこかで聞いた事のある声が落間を呼ぶ、それは紛れもなく落間だった。
変装している落間はまた自分の顔に手を触れる、ペンダントに触れてしまったのか、自分の姿はまた変わり老人に成っていた。
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