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玄関の鍵が空いているのだ。間違いなく閉めて出たはずだが、まさかこんなボロ屋に泥棒か?
恐る恐る中に入るが人影は無し、一先ず安堵し荒らされた形跡を確認した。
犯人は相当腕の立つ空き巣のようで、ムダに荒らした形跡はないものの、お気に入りだった服や引き出しにしまっていた僅かなお金がやられている。
落間は懐から懐中時計を取り出したが、その手を止める。
まあいいか、犯人を取っ捕まえてやろうと思ったがお金はまた増やせるし、そうなれば新しい服も買える。
意地になって犯人と対峙して、もしも返り討ちに遭ったら大変だ。
落間はコンビニ弁当をテーブルに置いてテレビを点けるとニュースをやっている。
「…川の中から遺体が見つかったということです。死後一ヶ月程度経過していると見られ警察は事件と事故の両方の可能性を考えて捜査しているということです。」
そんなバカな!
テレビから流れたのは大橋の下を流れる川から水死体が見付かったというもの。
落間には俄(ニワカ)には信じられなかった。
そして悪いことは立て続けに起きるものだ。ドンドンとドアを叩く音に玄関の覗き穴を覗くと、そこには面識がないはずのヤミ金の人達が立っている。
どういうことだ。彼らが来る理由などないはず。
無視も出来るがどうする?
しかし無視をしても恐らくまた現れるだろう。それよりも用件を聞いておいた方がいいかもしれない。借金の話は出ないはずだ。
落間は恐る恐るドアを開けた、正確には僅かに開けた所で残りは無理矢理開けられた。
「落間さん、困るな~ あんたはちゃんと返す人だと思ったのに」
「えっ!?」
優男から発せられる言葉に落間は耳を疑った。どう考えてもお金の話をしているとしか思えない。
「分かってるよな、返済期限、とっくに切れてるよ」
「あの、 えっと、 二〇〇万円でしたっけ」
「それなんだけど、ちょっと話が混みいっててな、事務所まで来て貰えるかな」
幸いというか、最悪というか、落間は出掛けられる格好だった為、そのまま連れ出されてしまった。
事務所では一番強面の男が左手に包帯を巻いた状態で出迎え落間に酷く睨みを利かせた。
「分かってると思うけど、こいつの怪我、あんたのせいだぞ」
「えっ!」
何を言っているんだ?俺のわけがない、新しい歴史においてここでお金を借りたことはないし、こいつらと面識すらあるわけがないのだ。
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