あなたのお望みの品をお売りします。

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この先どうすれば、歴史が変わっていない、借金もそうだし、ニュースも… ことの真相を探るには、このことに詳しい人物に訊くしかない。 落間はまたあの奇妙な店に訪れた。 「どうなってるんだ歴史が変わっていない。」 ある程度、状況を説明してから落間はオーナーに嘆いた。 「歴史の改変をお望みでしたか、それならそう仰って頂ければ…」 確かに詳細を話さなかったが落間には話せない理由があった。 「ですがあなたが買われた商品でも時間の改変は可能です。 しかしながらあなたは何か勘違いをしていらっしゃる。 時間旅行には二通りあるのですよ。精神のみが転送し肉体はその時々の自身の肉体となる。 そしてもう一つは精神と肉体、全てが転送される。 その懐中時計がどちらかは分かりますね。」 オーナーのその説明で落間は全てを悟った。これは後者だ。そして後者の場合、ある現象が起きる。それは… 「つまり時間を過去に戻せば、その時、この世に俺が二人いる?」 「左様、過去に戻してあなたが何もしなくてもその時間のあなたが結局は同じ行動を取るのです。」 そういうことか、そういえば幾つか心当たりもあったな。 「じゃあどうすればいいんだ」 「改変するには過去に戻ってその時間の自分の行動を変えるしかありません。ただし危険も伴います。何も知らない自分の前に自分と同じ姿をした人物が現れたらどう思います?」 想像もつかないが、良くないことが起きそうだ。 「それでも行くしかない。」 「では良い品をお持ちしましょう」 オーナーはカウンター背後の暗闇に隠れ黒い筒をもって現れた。例えるなら学校を卒業するときに授与される卒業証書を入れる筒のようだ。 蓋を開け筒をひっくり返して中を取り出すとそれは女性物のネックレスで、全体は金色、そして翡翠(ヒスイ)色の宝石の様なモノが嵌め込まれている。 「これは他者に変装できるネックレスです。どんな姿に変装するかはランダムですが、これを使えば万が一過去のご自身と接触しても見破られる事はありません。」 落間はオーナーに勧められるがままネックレスを試着し宝石部分を一撫ですると顔、髪型、体型、服装に至るまで瞬く間に変化し見知らぬ青年の姿をしていた。 「すごい」 驚くべきは声も変わっている点である。 「売ってくれ」 「お安くしておきますよ。」
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