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まぁ、結果は“惨敗”と言うべきもの。
「むむむ……」
「こうやって、王手と言われて王が逃げ場所を失った状態になると負けになるわけだ」
「なるほど……。どうやっても王が逃げることはできませんね」
「そう。どうだい?面白かったかい?」
そう笑いながら問いかけるお爺さんに私は盤上を見つめ続けながら
「もう一局お願いします」
そう言った私にお爺さんはキョトンとしていた。
しかし、返答のないお爺さんに顔を向けた私に笑顔でこう答える。
「一局と言わず、何度でも」
朝から始めて昼を忘れて夕方。
既に十局を超えた戦いが繰り広げられていた。
周囲には同じようなご老人たち。
その中心で私とお爺さんは互いに顔をしかめ合いながら盤上を見つめる。
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