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「私の姉弟たちも皆、なにかしらの生まれた意味を持っています。しかし、なんで生まれたのかがわからないのです」
本の表紙を手で撫でるように触り、私はお爺さんの目を見つめる。
「見聞を広めようにも自分が定義できなければ発展はありえません。これはそのための本です」
周囲のご老人たちも言葉の意味を汲んだのか押し黙る。
「“成長”が私に与えられた存在意義。この十数局の対局で“成長”出来なかったのだとすれば私は存在価値のない存在となります」
「いや、君の成長は素晴らしかった……!そんなに思いつめるほどでは!」
お爺さんは必死で私にそう訴え掛ける。
私は少しだけ目を瞑ってから、笑顔を浮かべてお爺さんに告げる。
「ああ、いえ……。そういう設定なので、そこまで思いつめているわけではありません」
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