パンに恋して

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木製の取っ手を引いて扉を開ける。 店内に足を踏み入れると、ふわりと香ばしい焼きたてのパンの香りが私を出迎えてくれた。 高鳴る胸の音を感じながら、店の奥へと足を進めて行く。 ドキドキするのだ、この店に入るだけで。 ううん、この店に今日行くと決めたその瞬間から。 私にとってこの店のパンは、単に空腹を満たしてくれる物ではない。 この店のパンは「ときめき」や「喜び」そして「癒し」を与えてくれる、まるで恋人のような存在なのだ。 まるで愛しい恋人に会いに行くように胸を高鳴らせながら、私は2日に1度はこの店を訪れていた。 けれども、たった1つ私を悩ませる問題がある。 それは、その愛しい恋人が1人ではないという事だ。
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