お金持ちの親友(耕司)

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俺の名前は、今井耕司。 どこにでもいる、18歳の大学生だ。 俺には、幼馴染の友だちがいる。 根岸頼人(らいと)。 昔から歩いて1分もないほどの近所に住んでいて、同い年ということもあり、保育園から中学校まで、同じところに通っていた。 高校は、まったくタイプの違う俺たちなので、さすがに別になったが、学校で会う機会が減ったからといって、関係が壊れたり、疎遠になったりすることはなかった。 頼人の専門は情報、俺は体育。 まったく違うジャンルだし、合わない点も多いが、とにかく話しやすい。 頭の悪い俺が、さして学校の成績にこだわらず、頼人を疎まなかったというのも、良かったのかもしれない。 俺と頼人のタイプが違ったから、方向性がぶつからなくて、お互い、ライバル視することもなかった。 その頼人から、昨日、電話があった。 「例の高額な店で、買い物してみたんだけどさ、結構、おもしろい店だったぜ」 「はぁ!?」 急な話で、思わず叫んでしまったが、頼人は明らかに、ニヤニヤしながら話している。 声の調子でわかる。 興味はあったので、話を聞いてみることにした。 頼人が買った服は、特に柄があるわけでもない、黒いTシャツだったらしい。 そのTシャツに、頼人は5万も払ったのだという。 正直、頭がおかしいのかと思ったが、頼人は、こう言った。 「なんで高いのか、知りたくてさ」 純粋に、好奇心らしい。 確かに、頼人は、それなりに家に金があるらしいから、そんなことをする余裕もあるのだろう。 いや、金銭感覚が普通と少しずれていると言ったほうが正しいかもしれない。 昔から、頼人と遊びに行くと、小遣いが少ない俺を気遣って、おごってくれることが少なくなかったし。 ともかく、頼人は語り始めた。
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