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そう言って、男性は、今度は初めて優しそうな笑顔を見せてくれました。
でも、一瞬だけ。すぐに感情の読み取れない笑顔に戻りました。
「あなたは、いつもここにいるの?
ここに来ればまた会えますか?」
男性は、ニィっと口角を上げて笑顔を作ると、
「あなたの魂が、また壺を呼んだ時、またお会い出来ましょう。
それでは、もうそろそろ別の方の壺と入れ替わってしまいますので。
本日は、ご来店誠にありがとうございました。
あなた様のお幸せを、心よりお祈り申し上げます。
では…」
「待って!!あなたの名前は?
名前を教えてください!!」
「…龍心(りゅうしん)…と申します。
では…」
男性は、いえ、龍心さんは、うっすらとした笑顔でお辞儀をしてくれた。
次の瞬間、視界がグルンと回ったかと思ったら、
私は、ぼんやり薄暗い道の真ん中に立っていた。
先程の映画のセットのような、その奇妙な店はどこにもなかった。
「龍心さん…」
私はボソッとつぶやいた。
でも、その店はどこにもなかった。
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