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「ちょ、ちょ、ちょっとぉ~……何、あの、ザ・イケメンは。腰抜けちゃうよ。」
視線は転入生に釘付けの知代が、腕だけにょきと後ろに伸ばして、器用に与の肩を叩く。知代だけではない。クラスの大半が、同様の反応を示している。
耀と張るほど整った顔立ち。
しかし、相反するような空気を纏っている多々羅。
「多々羅くんは、NYのマンハッタンからご両親のお仕事の都合で、こちらに引っ越してくることになったのよね。分からない事とか慣れない事もあると思うから、皆、色々教えてあげてね。席はーー」
鹿取と目が合って、与はギクリとした。
「蔀さんの隣、ね。」
指差された先を、皆が振り返り、多々羅は悠々とそこへ向かう。
教室で空いている席といえば、ここしかない。
だから、転入生と聞いた時点で予想はしていたがーー。
「いいなぁ、与。」
そう呟く知代には応えずに。
「よろしく」
与は席に着いた多々羅に声を掛けた。
「…………」
しかし、多々羅はチラッと、与に一瞥くれただけで、無言で席に着く。
ーーた、た、態度悪!!!
与は眉間に皺を寄せながら、厄介なお隣さんが出来たもんだと、疎ましく思うのだった。
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