一片

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無論、次の授業までの休み時間、その厄介な隣人は、クラスメイトという垣根によって与からは見えなくなった。 「マンハッタンのどこらへんに住んでたの?」 「私も前あの近くに住んでたんだけど」 「学校はどこにいってたの?」 「小さい時からそこにいたの?」 「家族はいるの?」 「会社やってる?」 「彼女いるの?」 「今家どこなの?」 自席に着いたまま、質問攻めになっている様子を与は見つめながら。 「すっごい人気ねぇ……」 前の席の知代に声を掛ける。 「そうだね。」 そして返ってきた声が、知代じゃないことに気付いて、ばっと振り返った。 「耀……君……!?あれ、知代は??」 知代の席に座る耀が、与の問いに、人差し指だけで答える。 その先を辿ると、例の転入生。 「あっ」 そして、その転入生を囲う連中のひとりに、間違いなくポニーテールの知代がいた。 与は知代が嫌いではない。むしろ好きだが、こういうミーハーな所に、たまについていけないと感じる。 「ざ、残念だね!耀君の取り巻きがみんなあっち行っちゃって!」 観念した様子で、与は仕方なく耀に向き直った。 耀の周囲に人が居なくて、与と隣同士、こんな至近距離で話す状況なんて、今迄一度もなかった。故に、出てくる言葉は完全な厭味でしかない。
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