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「ーー全部、耀くんのせいじゃない。」
耀は息を呑んだ。
「何されたの?」
目の前にきて理解する。与の身体に貼り付いた色の変わった制服も、海に入った後みたいになっている髪も、尋常じゃない。
思わず触れそうになった燿の手を、与は払い除けた。
パシ、と乾いた音がした。
「私に近づいたのは、こういう風になるよう、仕向けるためだったの?」
「ちが………」
「さすが、学園のトップスター。たった2日で、学園から追い出せる一歩手前だよ?」
「蔀さん……俺は……。」
「本気だったとか、嘘だったとか、そんなことはどうでもいいの。」
そう、そんなことはどうでもいい。
好きだとか嫌いだとか、重いとか軽いノリだとか。
少し興味が湧いただけとか、からかいだったとかそうじゃなかったとか。
そんなことは問題ではない。
「耀くんの存在が、私を陥れるの。」
あまりにも違い過ぎて。
関わるだけで、壊されてしまう。
「お願いだから、もう私に近づかないで。」
与はそう言い捨てて、耀の横を通り過ぎた。
蝉の声が、聴こえる。
沈黙を掻き消すように。
ただ、ただ、ひたすら、鳴き続ける。
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