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翌日は、いつもよりも早く起きた。
それは、前日の彼と、同じ電車にならない為と、もう一人の方の彼と登校時間が重ならない為だ。
あの銀杏並木の道を、静かに一人、歩きたいからだ。
びしょ濡れだという事に気付かれないように部屋に駆け込んで、アイロンをかけた制服は、一晩経った今、なんとか形状を取り戻していた。
夏休みに入ってしまえば、クリーニングに出せる。それまでの辛抱だと言い聞かせ、与は袖を通すと鞄を手にした。
「いってきまーす。」
「あら、今日は随分早いのね。」
「………」
母の軽い追及を無言でかわし、靴を履いて家を出る。
ギラと照り付ける太陽が、いつもより早い時間だというのに相変わらずで、容赦ない。
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