三片

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校門の前まで来ると、一瞬昨日の事がフラッシュバックして、与は立ち止まる。 ――忘れろ、忘れるんだ。あれは夢。悪い夢。この二日間はなかったことに。 パンパン、と頬を軽く叩いて気合を入れ、再び歩き出す。 学校は開いていたが、生徒はまだひとりも見かけていない。 部活動の生徒たちよりも早く着いたらしい。いつもならグラウンドを飛び交っている声も聞こえてこない。 与は部活に入っていない為、普段なら割とゆっくり来る方で、この道を歩いている時間帯には、朝練を終えた知代が、割とな確率で、元気に与の背中に突っ込んでくる。でも今日はそれもなしだ。 ――まだ誰にも会いたくないから良かった。 少し心の準備ができる。 与はほっと安堵して、昇降口に向かった。 そのまま履いて行ってしまった上履きは半乾き。その上道路を歩いて帰ったから汚い。今は自分の部屋のベッドの下に隠してある。帰ったら母親の目を盗んで洗うのは必至だが、とりあえず今日は、と職員玄関脇に常備されているスリッパを勝手に借りることにした。
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