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「ーーじゃあなんで……燿先輩が一方的にちょっかい出してくるんですか?」
子犬少年の質問に、与は頷くことはしないまま。
「こっちは、良い迷惑。」
剥がしたビニールをゴミ箱に捨てた。
「じゃ、私行くね。湿布ありがとう。」
そのまま、彼の脇をすり抜けて保健室を出て行こうとした与の腕が、捕まれる。
「え、何……」
「僕が、守ってあげます。」
サラサラの薄茶色の前髪の間から、見える大きな目は、今までと少し印象が違う。
「何、言ってるの?私、あなたの名前も知らないし……」
「平證(タイラ アカシ)」
動揺する与に、被せるように子犬は名乗った。
「1年F組、平證」
もう一度繰り返してーー
「僕があなたを守りますよ。」
ふわりと笑った。
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