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一瞬の沈黙の後。
「っはは!」
与は思わず吹き出してしまった。
「何言ってんの。どうやって守るっていうのよ。同じクラスでも同じ学年でもないのに。」
やんわりと證の手を外して。
「でもま、気持ちは嬉しい。ありがとね。殆ど保健室にはこないけど、また集会とかでは会えるかもね。ばいばい。」
小さく手を振り、背中を向け歩き出す。
しかし。
「——またね、蔀先輩。」
一瞬そう聞こえた気がして、与は振り返った。
もうそこに、仔犬のような彼はいなくなっていて、風だけが、ひゅーと廊下をぬけていく。
「まさか、ね。」
空耳だったかと、再び前に向き直って教室に向かう。
――私名前教えてないもんね?にしてもかわいい子だったなぁ。あれモテるだろうなぁ。
ここ数日与を悩ませる男子達とは似ても似つかない證に、心癒されながら、部活動の生徒達が登校してくる音に気付き、なんとなく足を速めた。
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