一の思い

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 私はくるはずのない電話をずっと待っていた。  もしかしたら私の着信を見て、かけてきてくれるのではないかと、ほんの少しの望みを抱きながら。そして、そんなはずはない、もう終わった事なんだからと自分に言い聞かせながら。  私達が別れたあの時、私は二度と連絡はしないと固く心に決めたていた。  それは、私達はもう元には戻れないと思っていたから。戻ってはいけないんだと知っていたから。もし、連絡をとってしまったら、私にとって幸せだった二人の時間を思い出し、必ずまた会いたくなると分かっていたから。  私達の時間は、あの時あの瞬間に終わってしまった。  あの人が言った、たった「一言」で…  そして、その「一言」は私達がまえから決めていた最後の約束の合図だった。  そのはずなのに。そう決めていたはずなのに、私はどうしてもあの人の声が聞きたくてたまらなくなってしまった。  その衝動を抑えきれず、気が付くと私は携帯電話を手にとっていた。そして、あの時から出来るだけ見ないようにしていた番号を探しはじめた。  私はあの人の名前を胸の中で呼びながら、アドレス帳をゆっくりとなぞっていく。その先には、あの時に私が捨てきれなかった僅かな想いがそこにあった。
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