三階に、いる!

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 1.  目覚まし時計が鳴っている。  眠い…。まだ寝てたい…。  桜井舞香は布団の中に頭まですっぽり収まった。目を開けたら負け…と言わんばかりに、決して目を開けなかった。そして、目覚まし時計を無視しようと試みた。  ジリリ、ジリリ、ジリリ!  根競べだ。  またもや無駄な抵抗を試みようとしている。その連続する機械音は、舞香が止めなければ当分の間、鳴り続けることになるだろう。毎朝、毎度のことなので、慣れっこなのだが…。  そう、毎朝のこと、いつものことで…。  と思った舞香は、布団の中で両目をぱちりと開いた。  あれ…? いつもと音が違う…?  舞香の目覚まし時計は、人工的ではあるがもっと柔らかい音のように感じる。文字にすれば「ピピピ、ピピピ」という音だ。今、鳴っている音は、「ジリリ、ジリリ」…と、どことなく金属と金属をこすり合わせる時に発する不快音に近いように感じたのだ。  布団の中から右腕を出し、枕の上の辺りに置いた小型の目覚まし時計をつかんだ。暗闇の中で舞香の右手が掴んでいる四角い小型の目覚まし時計からは、秒針を刻む機械音は微かに聞こえるだけだ。  やっぱり、違う…。  そこで、布団ごと身体を起こし、ベッドに付けたクリップ・スタンドの電気をつけた。その間も、ジリリ、ジリリ…という機械音は鳴りやまない。  寝ぼけ眼でベッドに造りつけになった棚の上に置いた愛用の黒縁メガネをかけた。  「まだ1時過ぎ…?!」  1時とは夜中の1時だ。目覚まし時計をセットしている時間でないことは、確かだ。   さっき寝たばかり…だってのに…!    ジリリ、ジリリ、ジリリ…    その音は、眠気でぼんやりしている舞香に対し、これみよがしに自己主張しているように不快だ。  舞香はおもむろにベッドから腰を上げた。この音を止めなければ安眠できない。  寝ぼけてはいたが、その安眠妨害の忌々しい音が、自分の携帯電話の呼び出し音でないことくらいはわかった。その機械音は、今、舞香がいる部屋の中からだとくぐもって聞こえている。  隣から? 
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