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舞香がいる4階のすぐ下の3階は、テナント用スペースになっており、今は何の店も入っていない。この時間帯でなくとも、お店が入っていないがらんどうの階に誰かがいる、なんてまず考えにくいことだ。
「 知ってる!」
相手は語気を荒げた。
「今更そんなこと…とにかく…3階にいる…いるんだよ…3階に…なんとかしてくれよ…頼むよ…」
相手の声はだんだんと消え入りそうに細くなり、そして電話は切れた。
今の時間が夜中の1時過ぎだということが、急激に舞香を心細くさせた。
4月とはいえ夜更けはまだまだ冷え込む季節だ。その寒さでこの身が震えているのか、それとも先ほどの電話のせいでなのか、それとも…。
「なんで家賃が安いかって言うと、電話の混線の件だけじゃないのよ。実は、舞ちゃんが住む部屋の下の階、三階はいわゆる事故物件なの。だから今でもなんのテナントも入ってなくて空いたままで…。同じ階でないとはいえ、これは言っとかなくちゃいけないよね」
このマンションの部屋を紹介してくれた桐子の言葉を思い出したからなのか…とにかく舞香は震えていた。
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