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「で、何がいるって、3階に?!」
その「努力のたまもの」である黒く長いつけ睫をばさばさと上下させながら、桐子は舞香の方へ熱いコーヒーが入ったカップを差し出した。
いつもすみません、いただきます、と頭を下げたものの、コーヒーを飲む前に舞香はメガネを少しずり上げて桐子の顔をまじまじとみつめた。
「先輩?」
「何? 何がいたって、3階に?」
桐子は濃いゴシック・メイクがすっかり完成した顏を舞香に寄せてきた。
明らかに、
「先輩、おもしろがってるでしょ?」
桐子がこの話をおもしろがることを予想していたが、やはり少々、憮然とした。
そんな舞香の心中を知ってか知らずか、「年中ハロウィーンの魔女メイク」の桐子は、悪びれた様子など少しも見せない代わりににんまりと笑顔を見せた。
「当たり前でしょ」
桐子は好奇心丸出しの顏をまったく隠そうともせず、
「オカルト研究会所属としては、こんなにおもしろい話を聞き逃すわけにはいかないっての。アラレちゃんだって、内心おもしろいって思ってるでしょ?」
と桐子は、コーヒーをぐいと飲んだ。
「私はミステリー研究会所属です」
舞香もコーヒーを一口飲み、きっぱりと言った。
「まーだそんなこと言ってるの? どっちも同じようなもんでしょうが!」
桐子の言うことはある意味、正しかった。
舞香と桐子の通う大学のオカルト(心霊現象)研究会とミステリー(推理小説)研究会の部室は隣り合っている。隣同士だから一緒くたになるのか、それとも、オカルトとミステリーを一緒くたにしているのか、多分、どっちも理由になるのだろう、何故か仲が良いというべきか、どういうわけか合流してしまうことが多いのだ。
舞香はそういう事情は、なんとなくわかるような気がした。
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