Sugar candy  寧々

1/1
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ

Sugar candy  寧々

 桜咲く。  手を繋いで歩いた小道。  揺れるバッグに沢山の宝物。  小さな絵本、大きな期待。  ポケットには二個で一つのチョコレート。  君と食べる半分このチョコは、いつもより甘い。  夏の風。  揺れる風鈴と大きな向日葵。  風が通る君の家で、寝転がって読んだ本。  おやつに食べたアイスクリームも二個で一つ。  半分こが楽しくて、口に含むと甘くて溶けた。  秋の夕暮れ。  真っ赤に染まった空と、蜻蛉。  蜻蛉を追って迷子になった。  ワンワン泣いた私と、オロオロした君。  親切な交番のおまわりさんがくれた、一つのお芋を半分こにして食べた。  ホクホクしてて、ほんのり甘くて涙が止まった。  冬の雪。  世界を真っ白に染めた町。  私達は、早起きして雪ウサギを作った。  一匹じゃ可哀想と言った君が、二匹目を作って並べてくれた。  手が真っ赤に悴んで、一つの手袋を二人で分けた。  手袋と反対の繋いだ手の方が温かかくて。  その手で食べた新雪は、冷たくて甘い水。  失ってしまった大切な時間。  失ってしまった大切な友達。  失ってしまった信頼。  大切さに気づくには、私はまだ幼すぎた。  素直になるには、子供すぎた。  諦めてしまうには、若すぎた。  素直じゃなくて頑固な私は、君を失いたくない気持ちに封をする。  たった一匹だけの雪ウサギ。  君を見つめる時間が長すぎた。  ねえ、気づいてよ。  私はずっと、ここにいるよ。  一匹は寂しいって君が言ったのに。  私はずっと、ここにいるよ。  一人ぼっちの半分このお菓子は、焦げた砂糖の味がした。  君がいないと、美味しくない。  君がいないと、甘くない。  だから、ねえ、気づいて。  私の側にいて。  私を見つけて。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!