五月 脱落

5/9
前へ
/110ページ
次へ
「あ、あの」 「次倒れたら辞めような、って駿とも話し合ったんです。こいつ、音楽のためなら体調も省みず無茶をするので、今度部活中に体調を悪くしたら部を辞めようって」 「だから先生、先生のせいじゃないですから」  父親の言葉を継いだのは、駿自身だった。 「七尾くん」 「駿、目が覚めたのね」  母親が胸を撫でる。それを見て駿が笑った。 「もう、母さんこそ無理してるじゃないか。僕なら大丈夫」  その笑みを、ふっと消して駿は両親に体を向けた。 「父さん、母さん、ごめんだけど、席を外してくれないかな。先生と話したいことがあるんだ」 「……わかった」 「なにかあったら呼ぶのよ」  両親はそう言い、守山に深く礼をして、病室を出た。 駿は二つの足音が十分遠ざかるのを確認してから、こう切り出した。 「先生、部の方はどうです? 金賞、取れそうですか」
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加