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「一人でも私に共鳴してくれる子がいれば、その子を見て私も頑張ろうって思ってくれる子がきっと現れる。だから、どんなに煙たがれようと、私はこの部を厳しく指導し続けるし、きっといつか全国へ導いてみせる。堕落した部だって、荒れた学校だって再生できることを示したいから」
最後は自分に言い聞かすように告げた守山の真剣な目に、七尾駿は心揺さぶられた。と同時に、悔しさが込み上げる。
「僕は、このブラバンが陽の目を見ることはないだろうと思ってた」
守山は駿の言葉に耳をすます。
「僕はそもそもこんな身体だし、がつがつやる部活にはついていけない。だからやる気のないこの部くらいがちょうどいいって思ってた。パーカッションの皆としゃべるのが楽しいだけで合奏は聞けるレベルじゃないくらい酷かったけど、それでいいと思ってた」
だけどね、と駿は続けた。
「守山先生を見て、そんな僕が恥ずかしくなった。皆で合奏する喜びに、小学校の金管バンド以来に気づけた。この人についていけば、きっと音楽ができるって思えた」
駿はすすり泣いていた。
「なのに……なのに。今このときに、部がいい方に変わろうとしている日に、部を去りたくない。自己紹介で披露したフレーズに期待感を寄せてくれた顧問の元で、必要とされたい」
「七尾くん……」
「今度倒れたら退部なんていう、今年度始まる前にした約束なんて、破ってしまいたいんだよ!」
これほどに激しい七尾駿の姿を、両親さえ見たことはなかった。
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